KPMGは、オーストラリアのベンチャーキャピタルのH2 Ventures Pty. Ltd.と共同で作成した、2018年版「フィンテック100」を発表した。

「フィンテック100」とは、世界のマーケットリーダーであるフィンテック企業50社からなる「リーディング50」と、新しい製品やソリューションを有する新興フィンテック企業50社の「エマージング50」から構成される年次レポート。

デジタル決済からデジタル融資、インシュアテック、ネオバンクまで、フィンテックにより世界の金融サービス業界に変革をもたらしているフィンテック企業を紹介しており、2018年版で5回目の発行となる。

2018年版では、日本から2社が選出されており、仮想通貨取引プラットフォームの開発・運営のほか、ブロックチェーンを基盤とした金融サービスなどを提供するQUOINE株式会社（29位）と、多彩なテーマから投資先を選択できるオンライン証券など、資産運用サービスを提供する株式会社FOLIO（44位）がランクインした。

「フィンテック100」の選定基準

「リーディング50」、「エマージング50」の計100社は、以下の5つの要因に関連するデータに基づいて、広範にわたるグローバルな調査と分析に従って選定される。

（1）資金調達総額
（2）資金調達率
（3）地理的および業種的な多様性
（4）消費者及び市場の牽引力
（5）X-factor(製品、サービス、事業モデルのイノベーションの程度) −「注目の新興企業」の選定のみに適用される主観的尺度

2018年「フィンテック100」選定企業のカテゴリー

・決済サービス……34社
・融資サービス……22社
・資産運用……14社
・保険サービス……12社
・ネオバンク……10社
・マルチ……4社
・その他……5社

2018年の「フィンテック100」では、36ヵ国のフィンテック企業がランクイン。前年同様、中国のフィンテック企業が、上位10社のうちの4社を占めた。カテゴリー別に見ると、決済会社と融資会社がリストの主役となっている。

「フィンテック100」における8つのハイライト

1）競争のグローバル化
2018年は36ヵ国の企業がランクインしており、2017年の29ヵ国、2016年の22ヵ国から増加している。また初めて、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、インドネシア、コロンビア、タイ、バーレーン、ベトナム、ヨルダン、ミャンマーの企業がランクインしている。
さらに特筆すべきことは、2018年に選出された企業の約半数（41社）が、新興国で設立され、現在も新興国市場で活動していることである。

2）決済企業がフィンテック100の主役
分野別では、決済企業が34社で最多。次いで融資企業22社、資産運用企業14社と続く。
幅広い金融サービスを顧客に提供する多角化したフィンテック企業がリストの上位を占めている。

3）資金調達総額の急激な増加
2018年版では、フィンテックへの資本投資の急増が明らかになった。
「リーディング50」企業は、この1年間だけで260億ドル以上を調達しており、創業以来の調達資金総額は500億ドルを超えている。巨額ベンチャー投資家の他に戦略的投資家が加わり、フィンテック企業に対するベンチャーキャピタルによる支援が加速している。

4）中国の巨大フィンテック企業がサービスを拡大
2018年版の上位10社のうち、4社が中国のフィンテック企業で、その全てが中国の小売企業や保険会社、ネット通販企業からのスピンアウト（独立）した企業だった。

5）ネオバンクへの注目の増大
旧来のテクノロジー資産という重荷がないネオバンクは、従来からのインフラを一気に飛び越し、より迅速に商品のイノベーションと顧客獲得を進めている。また、既存の金融サービス機関でも、デジタル商品やサービスへの参入が相次いでいる。

6）巨大インターネット企業＝フィンテック
巨大なテクノロジーグループ企業による金融サービス事業への参入が、かつてないほど本格化してきている。

7）インシュアテックのオンデマンドビジネスモデル
保険業界における破壊的変革は急速に進行しており、12社のインシュアテック企業が2018年のリストにランクインしている。破壊的テクノロジーと消費者のライフスタイルの変化が、保険の提供と消費、両方の在り方の常識を変えつつある。

8）ICO(イニシャル・コイン・オファリング)の増加
2018年は、12社（うち11社がエマージング50）が、ICO（イニシャル・コイン・オファリング）を通じて、総額7億2,900万ドルの資金を調達した。その大多数は、アルゼンチン、タイ、バルバドス、リトアニア、ロシアなどの新興市場で設立された企業である。