ブッキング・ドットコム・ジャパンは2019年5月16日、IT業界で働く女性に関する調査の集計結果を発表した。アイスランドやノルウェーなどヨーロッパの国々には、女性が社会や企業で活躍できる環境が整っている。しかし今回の調査の結果、IT業界は世界的に、女性が活躍できる環境が整っているとは言いがたいことが分かった。

この調査は、オランダBooking.comが実施したもので、調査対象は世界10カ国（イギリス、アメリカ、フランス、ブラジル、オランダ、ドイツ、中国、オーストラリア、インド、スペイン）の女性6898名。内訳はIT業界を志望する高校生および大学学部生、業界経験の浅いIT業界従事者、業界経験豊富なIT業界従事者、およびIT業界への復帰者だ。調査期間は2018年8月2日～9月6日。

まず、就職活動時の性的偏見が女性のIT業界進出を難しくしているかどうかを聞いたところ。IT業界で働いている女性の47％、IT業界を志望する大学生の62％が「難しくしている」と回答している。就職活動の段階からIT業界には、女性を遠ざける障壁がある可能性が高いことが分かった。

■「就職活動時の性的偏見が女性のIT業界進出を難しくしている」という回答の割合

※ブッキング・ドットコム・ジャパン調べ

また、IT業界の求人については51％が「IT企業の求人は女性からの応募を想定して書かれていないと思う」と回答している。さらに、IT業界で働く女性と大学生の54％が、「IT企業の求人はコーディングやエンジニアリングなど技術職のことを多く言及し、それ以外の職務には脚光を当てていないと感じる」と答えている。

■IT企業の求人について女性が感じること

※ブッキング・ドットコム・ジャパン調べ

この点についてブッキング・ドットコム・ジャパンは、「企業が仕事内容や機会の全貌を正しく伝えることができず、適材を募集できていないこと」が多くあるためと分析している。そして一例として、求める人材として「優れている」や「リードできる」など、男性を想定していると思わせかねない言葉を使っている点を挙げている。

このためか、IT業界を志望する女子大学生の72％が、「IT企業に勤めるには、部署（人事部、財務部、法務部、マーケティング部など）や職務内容にかかわらず、技術的なスキルや情報工学科の学位が必要だと思う」と回答している。この傾向は特にインド、中国、ブラジルの3カ国において顕著に表れており、インドでは83％、中国では79％、ブラジルでは74％が同様に回答している。

※ブッキング・ドットコム・ジャパン調べ

多くの女性が、IT企業に勤めるには部署や職務内容に関係なく、技術的なスキルや情報工学科の学位が必要だと感じている。特にこの3カ国ではその傾向が強い

入社後のキャリア形成について聞いたところ、62％が「自分が昇進するには、次の役職で必要なスキルをすでに持っていなければいけないと感じる」と回答している。IT業界では男性が将来の可能性について評価されて昇進する傾向があることを考えると、女性はIT業界では昇進が難しいと言える。この傾向はインド（75％）と中国（74％）で特に強かった。

※ブッキング・ドットコム・ジャパン調べ

オランダBooking.comのCEOを務めるGillian Tans氏は今回の調査結果について「昨今、IT業界における性別多様性についての議論の多くは、女性が小さい頃からSTEM教育（科学・数学・技術領域に重点をおく注目される教育方針）に興味を持ち、将来その分野でキャリアを築いていくために業界や教育機関、政府ができることに終始している。今回の調査では、女性がIT業界に就職できるかどうかは、企業の採用プロセスのあり方（業界全体についての説明の仕方、サイトに掲載する求人内容やキャリアを形成するあらゆる機会の記載の仕方等も含めて）が極めて深く関わっていることが分かった。世界各地の女性回答者の51％が、自身がIT業界で成功するためのもっとも大切な要素に、職場の多様性を挙げていることから見ても、今回の調査結果は重要な発見だと言える」とコメントしている。