調査データからわかる働き方改革の成果とは。2012~2021年の10年間で「平均残業時間」や「有休消化率」は大幅改善か。
月間残業時間・有休消化率の平均値は、ともに10年前より改善
2018年に「働き方改革」の関連法が成立し、2019年から順次施行されている。法改正によりさまざまな待遇改善が期待されているが、この10年間では働き方にどのような変化があったのだろうか。
はじめにオープンワークは、「月間平均残業時間の推移」について調べている。その結果、10年前の2012年における月間平均残業時間が46時間だったのに対し、2021年は24時間だった。この10年間で、月間平均残業時間が22時間減少していることが判明した。
あわせて「有休消化率の推移」について集計した結果、10年前の2012年は5割を割り込む41%だったが、2021年は60%に上昇し、改善傾向にあることが明らかとなった。
月間残業時間や有休消化率の変化は20代が特に顕著に
次に同社は、「年代別の月間平均残業時間の推移」をまとめている。その結果、2012年に最も残業が多かったのは20代の48.5時間で、40-50代の40.1時間と8.4時間の差があった。しかし、年を追うごとにその差は縮まり、2021年では20代が23.5時間と全年代の中で最も少なく、40-50代が24.3時間と逆転現象が起こっている。
若い世代を中心にワークライフバランスを重視する傾向が強くなっていることや、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるテレワークの普及で業務時間を調整しやすくなったことから、この結果につながったと推測できる。
一方、「年代別の有休消化率の推移」では、20代と他年代の差が開く結果となった。2012年は各年代で40%程度だったが、2021年では20代が63.3%、30代が57.4%、40-50代が56%となっている。2019年の法改正により、企業は10日以上の有休を付与している労働者に対し、年間5日間取得させることが義務となった。そのため、「有休を取得しやすくなった」という声も多く、有休消化率向上の要因となったと考えられる。
残業時間が大きく減少した業界は「建築」や「コンサルティング」、「放送」など
次に同社は、「月間平均残業時間の推移」を「業界別」に集計している。その結果、10年間での残業時間の減少幅が大きかったのは、「建築・土木・設備工事」の-37.6時間、「コンサルティング・シンクタンク」の-36.8時間、「放送・出版・新聞・映像・音響」の-35.1時間、「広告代理店・PR・SP・デザイン」および「不動産関連・住宅」の-33.6時間などで、いずれも10年前の平均残業時間は60時間以上であったが、2021年までに30時間以上減少した。
また、2021年の残業時間が最も少なかった業界は、「ファッション・アパレル・繊維」で13.5時間だった。そのほか、「旅行・ホテル・旅館・レジャー」が16.1時間、「小売(百貨店・専門・CVS・量販店)」が17.5時間などと続いた。
有休消化率が向上した業界は「証券」や「建築」、「不動産」など
続いて同社が「業界別の有休消化率の推移」を集計すると、「証券会社・投資ファンド・投資関連」が+29.7%、「建築・土木・設備工事」が+29.5%、「不動産関連・住宅」が+28.4%で上位となった。10年前はいずれも20~30%強程度の消化率だったのに対し、大きくポイントを上げている。
また、2021年で有休消化率が最も高かった業界は、「通信・ISP・データセンター」で73.2%だった。そのほか、「コールセンター・業務請負」が72.8%、「自動車・自動車部品・輸送機器」が71.8%で、いずれも7割を超えている。通信と自動車業界については2012年から6割以上の消化率だったが、10年間でさらに有給消化率が上がっていることがわかった。
本レポートから、この10年間で社会全体の働き方が大きく変わり、年齢別・業界別の実態も変化していることがわかった。今後も各社が働き方改革を推進することによって、残業時間の減少や有給取得率の向上が期待できるだろう。今後10年間の働き方の変化にも注目していきたい。
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