デジタル人材を見出す方法とは。非デジタル人材層における潜在的なデジタル志向を調査

人材コンサルティング企業のデロイト トーマツ グループは2020年5月、「デジタル人材志向性調査」の結果を発表。この調査は、約3万人を対象としたスクリーニング調査、および約3,700人を対象としたアンケート調査の回答から、デジタル人材・非デジタル人材の特性と実態を分析したもので、調査は2020年2月7~9日の3日間おこなわれた。これにより、企業がデジタル人材を見出す方法や、育成における課題が明るみとなった。

デジタル領域での業務経験をもつデジタル人材はわずか1割

新型コロナウイルス感染症拡大の影響が長期化すると予想されるなか、企業では業務プロセスのデジタル化に向けた動きが進んでいる。それにともない、デジタル領域での業務経験者である「デジタル人材」の確保や育成が重要視されている。平成27年度の国勢調査によると、日本において、フルタイムで働く20~50代の男女約3,000万人のうち、「デジタル人材」は約12.3%の約367万人と推計されている。



デジタル人材の割合を年代別で見ると、最も多いのは20代の14.1%、次に30代の13.5%となる。しかし年代が上がるにつれ、デジタル人材の割合が2割弱ずつ減っていくのが現状として見えてくる。


3割の人が「3年以内の離職意向あり」。若年層ほど高い傾向

また、デジタル人材の離職意向について質問すると、「3年以内に離職意向あり」と回答した人は31.1%にのぼり、およそ3人に1人の割合で、早期離職を考えていることがわかる。



3年以内の離職意向の有無を年代別で見ると、「離職意向がある」との答えが最も多いのが20代の48.1%、次いで30代の34.2%となった。若年層ほど早期離職意向が高い傾向にあるようだ。



デジタル人材の志向性は「世の中へのインパクトの創出」や「新しいものを生み出す」こと

続いて、デジタル人材と非デジタル人材の志向性を調査し、各カテゴリーで差異が大きかった項目を分析した。その結果、デジタル人材は不確実な中でも新たなことに挑戦し、社会にインパクトを与えることを考える傾向であることが判明。また、「魅力的な仕事」、「魅力的な会社」、「仕事観」といった志向性を調査する36項目のカテゴリーに基づいたクラスター分析からは、デジタル人材のペルソナとして「ビジョナリー・チャレンジャー型」、「成果志向チャレンジャー型」、「コラボレーション重視型」、「仕事推進型」、「コンサバ型」といった5種類のタイプに分類できることもわかった。これらのタイプにより、年代や役職および仕事のこだわりといった志向性についても、傾向が異なるようだ。



「潜在デジタル人材」の育成は「興味」と「志向性」がポイント

また、非デジタル人材の中から、デジタル人材を効率的に育成する上で、アプローチが最も効果的に働く層を分析した。非デジタル人材層にデジタル領域への関与意向を質問すると、デジタル領域に「関わりたい」、「どちらかというと関わりたい」との回答が13.9%だった。さらに、非デジタル人材の志向性とコンピテンシー分析の結果に、同社の知見を踏まえると、「チャレンジ&合理バランス型」、「条件付きチャレンジャー型」の2タイプが、相対的にデジタル領域での行動および意識特性の適合性が高いと考えられるようだ。


また、有力な育成候補者である潜在デジタル人材を特定するため「デジタル領域への関与意向」と「行動・意識特性の適合性」の2軸から分析すると、非デジタル層全体の19.8%が潜在デジタル人材に該当することが判明した。



デジタル人材育成の課題は環境整備

また本調査では、潜在デジタル人材が一定数あるなかで、企業がデジタル領域に関わる機会を提供できていない実態も明らかとなっている。非デジタル人材層に対し、デジタル業務への関与の機会の有無をたずねたところ、「ない」または「わからない」が85.6%という結果になった。



同様に、デジタル領域でのトレーニング機会や支援の有無についても調べると「ない」または「わからない」が89.1%にのぼっている。デジタル領域での就業支援も、非デジタル人材の育成課題の一環であることがわかった。



世界的にデジタル化が加速している昨今、デジタル領域に特化した人材育成は企業の課題ともいえるのではないだろうか。デジタル業務の経験の有無に関わらず、潜在的に興味・関心のある層を洗い出し、効果的にアプローチすることが今後必要となりそうだ。

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